| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-020

メダカにおける遊泳能力の緯度間変異に関する研究

*鈴木雄也,三宅崇,山平寿智(新潟大・院・自然科学)

近年、高緯度に生息する個体ほど、短い成長期間に対する適応の結果として高い成長能力を進化させていることが、メダカOryzias latipesを初めとして様々な変温動物で明らかになってきた。しかし、速い成長は生活史のあらゆる面で有利なはずであるにもかかわらず、低緯度の個体はなぜ速い成長を進化させないのだろうか。これは、速い成長に対するトレードオフの存在を示唆している。これまでの研究で、メダカでは、‘獲得トレードオフ’の存在が示唆されている。すなわち、高緯度のメダカ稚魚は速い成長を達成すべく餌を多く食べる(=資源の獲得量が大きい)‘代わりに’捕食者されるリスクが高いことが知られている。しかし、高緯度のメダカ稚魚の高い捕食脆弱性が、どのように大きな摂餌量と関係しているかについては明らかになっていない。本研究では、捕食脆弱性の至近要因の解明を目的に、遊泳能力と警戒性を高緯度(青森)と低緯度(敦賀)のメダカとで比較した。ビデオを用いた遊泳行動の観察の結果、高緯度のメダカ稚魚は、低緯度の稚魚に比べ、定常遊泳速度も突進遊泳速度も遅いことがわかった。また、高緯度の稚魚は、低緯度の稚魚に比べ、捕食者の攻撃を模したかく乱に対する警戒性も弱いことがわかった。高緯度の稚魚の遊泳能力の低さと捕食者に対する剛胆さは、それぞれ大きな一回摂餌量と高い摂餌欲求によるものと考えられた。以上の結果は、高緯度の稚魚は餌を多く食べる‘がゆえに’、補食されやすいことを示している。


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