| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-024

ヤマネによる2タイプの巣箱の利用比較

*玉木恵理香(筑波大・生物資源),杉山昌典(筑波大・農林技術センター),門脇正史(筑波大・生命環境)

ヤマネGlirulus japonicus(国の天然記念物、準絶滅危惧種)は森林に依存した種である。そのため、開発による森林の減少・分断化によりヤマネ個体群が影響を受けていることが懸念される。希少種であるヤマネの保全が必要であるが、夜行性で発見・捕獲が困難なことから、野外での生態調査はあまり多くなされていない。

ヤマネの調査には一般的に小型鳥類用の木製巣箱が用いられてきたが、購入費用や製作・設置に労力がかかり耐久性もない。ヤマネの調査の効率化のためには巣箱の改良が必要だと考えられる。本研究では、安価で耐久性のある塩化ビニル樹脂性パイプと木材を組合せた改良型塩化ビニル樹脂製巣箱(以下、塩ビ管巣箱と略する)を考案した。ヤマネによる塩ビ管巣箱と市販の鳥類用木製巣箱(以下、木製巣箱と略する)の利用を比較することにより塩ビ管巣箱の有効性を検証することを目的とした。

本調査は長野県の筑波大学農林技術センター八ヶ岳・川上演習林で行った。調査地の林道・歩道の樹木に塩ビ管巣箱(大・中・小)と木製巣箱を各100個ずつ設置した。2009年6月〜11月の間に月に1〜5回巣箱を観察し、巣箱利用生物と内容物を記録した。ヤマネ発見時には体重測定と雌雄判別後、個体識別用標識をつけて放獣した。

ヤマネ以外の動物も巣箱を利用することが知られているが、他の動物の利用が少ないほどヤマネが巣箱を多く利用できると考えられる。本研究において、ヤマネの利用は塩ビ管巣箱と木製巣箱間で差がなかった。ヒメネズミの巣箱利用も観察されたが、塩ビ管巣箱より木製巣箱を多く利用していた。ヒガラは木製巣箱のみを利用していた。 

このことから、木製巣箱より安価でヤマネ以外の動物の利用が少ない塩ビ管巣箱はヤマネの調査において有効ではないかと考えられる。


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