| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-044

沖縄やんばるの林道からの距離に伴うトビムシ群集の変化

*長谷川元洋(森林総研 木曽),佐々木健志(琉球大),佐藤大樹(森林総研 九州),阿部真 (森林総研)

沖縄やんばる地域では多くの林道が開設され、周辺の森林の環境の変化や、外来生物の侵入を促進するなど、生物群集の構造に与える影響が懸念されている。この研究では、林道からの距離にともなうトビムシ群集の変化について検討を行い林道設置のトビムシ群集に与える影響について考察した。

西銘岳周辺の開設後5年以内の林道(新林道)と開設後30年以上経過した林道(旧林道)のそれぞれの周辺に5サイト、合計10サイトを設置した。各サイトの林道に沿って45mのラインを設定し、ラインの5mおきに林道から林内方向垂直に1m、5m、20mの距離の地点、計30カ所のリター層及び土壌(0-5cm)の採取を行い、ツルグレン装置を用いてトビムシを抽出した。

林道から1m地点は20m地点と比較して、個体数、コアあたりの種数が有意に少ないということが示された。また、NMSによって座標付けすると、1mと20mの群集はそれぞれに分かれて位置づけられ、MRPPによる解析により、1mと20mによる群集のグループ分けはp<0.05で有意なものと認められた。過去の研究より、腐植に依存すると考えられる種が、1mの群集で減少していた。以上から、その周辺1mの群集構造を20m以上の森林内のトビムシ群集とは異なることが示唆され、その要因として、林道付近における植被の喪失による乾燥および、住み場所資源であるリター量の減少があげられた。

林道の新旧では、古い林道の方がよりトビムシ群集における個体数減少、腐植依存種の減少の度合が高い傾向があった。しかし、新旧林道間では、林道設置時の施工や、開設場所の条件が異なるので、林道開設からの時間とともに劣化度合が進行するかどうかは、より多点での調査や、経時的な調査を行った上で判断する必要がある。


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