| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-056

絶滅危惧沈水植物ガシャモクの保全に向けた北九州市での取り組み

*真鍋徹(北九州自歴博),須田隆一,中村朋史(福岡県保環研),清水敬司(ガシャモク再生の会),大野睦子(北九州市),佐藤尚之,森下正人,原口公子(北九州市環境科学研究所),野尻まちこ,山口新一(北九州市環境局)・井中卓生(市丸小学校)

ガシャモクは、現在、国内では北九州市のため池(以下、当池)のみに自生している沈水性の多年生植物である。当池ではかつて旺盛なガシャモクの生育が確認されているが、2000年に茎先端が屈曲し、葉が縮れて花穂が伸長せず、基部の朽ちたシュートが出現し、この年を境に生育面積が急激に減少した。

2002〜2005年における当池表層のCOD、T-N及びT-Pの平均値は、それぞれ、1.1、0.30及び0.009mg/lであり、水質の悪化が当池におけるガシャモク個体群衰退の直接的要因ではないと思われた。一方、最大で35cmの底泥が堆積していた地点があり、堆積した底泥の粒度組成はシルト及び粘土の割合が高かった。また、かつてガシャモクが生育していたが現在は消滅した地点は多量の底泥が堆積していた池中心部やその周囲に多く、現存地点は泥厚5cm未満の池岸付近に多かった。これらの結果から、多量に堆積した底泥がガシャモク根茎の呼吸阻害をもたらすなどし、個体群が急激に衰退した可能性が考えられた。

現在、地元小学校等複数の施設で、切れたシュートに由来するガシャモクの栽培を実施している。また、底泥中の埋土種子を確認するため、2007年に底土コアサンプル(径5.5cm)を5か所から採取した結果、深さ20〜40cmの層に埋土種子が存在し、その発芽も確認した。そこで2008年に、休耕田に4個の試験区(4m×1m)を設置し、各試験区に深さ別に採取した底土をそれぞれ5cm厚で撒き出す実験を行った。その結果、20〜40cmの深さから採取した底土から、ガシャモクの発生が確認できた。


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