| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-058

獣害問題において地域住民の対策意欲・被害認識に影響を与える社会的要因

*鈴木克哉(兵庫県立大)

近年、野生動物と人間活動との軋轢が各地で急増している。なかでも、野生哺乳類による農業被害や人身被害が深刻な社会問題となっており、これらは獣害問題と呼ばれている。 獣害問題においては、果樹や野菜などの販売用作物に対する経済的な被害の一方で、自家消費作物や近親者への贈答用に生産される作物への被害など、必ずしも金銭に換算できない被害もある。耕作意欲の低下なども心配されており、とくに中山間地域で農業を継続させてゆくうえで獣害対策は重要な課題となっている。その一方で、集落には野生動物の誘引要因となる生ごみや野菜の収穫残渣、放任果樹などが放置されている場合が多く、また、野生動物の出没を抑え、効率的に追い払うための環境整備の実施など「獣害に強い集落づくり」にむけて住民主体型被害管理の実現が、問題解決への重要な課題となっている。

そこで、本研究では、地域が主体となった被害管理を推進し、あつれきを総合的に軽減する手法を検討するために、獣害発生地域(兵庫県篠山市ほか)に居住する被害住民を対象に意識調査を行い、地域住民の対策意欲と被害認識に影響を与えている要因の定量的な把握を試みた。その結果、被害対策についての知識や技術を十分保有している農家は、知識量が少ない農家と比較して、対策に費やせる労力が高まる傾向にあることが示唆された。また、主に自家用に生産している農家より主に販売用に生産している農家の方が対策に費やせる労力が高い傾向にあることも明らかになった。さらに、「被害経験」「営農意欲」「対策知識量」「支援満足度」「孤立感」「集落活性度」「問題許容性」など社会的要因が地域住民の「対策意欲」や「対策実行意図」あるいはにどのような影響を与えているかについて分析し、報告する。


日本生態学会