| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-089

忌避条件付け放獣後のツキノワグマの移動ルートと環境選択

*横山真弓,森光由樹,関香菜子(兵庫県立大),斎田栄里奈(森林動物研究センター)

ツキノワグマの忌避条件付け放獣(学習放獣や移動放獣)は、絶滅が危惧されているツキノワグマの保全管理における一つの手法である。管理捕獲(有害及び錯誤)時において、捕殺することなく放獣することで、人為的な死亡率を最小化することを目的としている。しかし、ツキノワグマの生息地域周辺の行政や住民にとっては、忌避条件付け放獣後のクマの行動に対する不安は大きい。そのため、放獣後の行動を監視し、移動ルートやその後の位置などについて情報提供を行うことは、放獣の理解を得るうえで大きな役割を担う。

本研究では、忌避条件付け放獣と単純放獣を行った個体の放獣後の行動特性について明らかにすることを目的とした。兵庫県氷ノ山山系に生息するツキノワグマの管理捕獲において、忌避条件付け放獣を行った9頭のツキノワグマにGPS首輪を装着し、2時間おきの行動を30日監視した。9頭の放獣地は同一地点である。また、学術研究捕獲により、6頭のツキノワグマにもGPS首輪を装着し、同様の行動追跡を行った。得られた測位データのうち3Dデータをディファレンシャル補正し、GIS上において放獣地点からの移動距離、利用標高、人為環境からの最短距離、利用植生を算出・抽出した。これらの変数と放獣方法や放獣後の日数、個体の属性との関係について、一般化線形混合モデルを用いて解析した。放獣方法の違いによるツキノワグマの行動特性の結果から、現在兵庫県で実施している忌避条件付け放獣の効果や改善点について検証する。


日本生態学会