| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-102

農地基盤整備予定地での生物多様性調査と保全策の模索

今村彰生*, 岡本奈保子, 金城優華, 田谷以生, 湯浅千裕, 大西信弘(京都学園大バイオ環境)

京都府亀岡市曽我部町は地勢としては亀岡盆地に含まれ、稲作地帯である。2006年より京都学園大学の教員と学生で「かめおか団栗団」という調査団体を組織し、同地をメインサイトとして生物相総合調査に取り組んできた。大分類群を網羅することを目指した結果、3年間で植物630種、クモ形綱60種、鳥類60種、両生爬虫類20種、などを記録した。標本の保存にも取り組み、地域自然の生物多様性の保全に貢献することを意識し、生態学会55回、56回大会において成果を発表してきた。

メインサイト一帯で、2011年着工の農地基盤整備が計画されており、着工目前という状況だが、当地の水田地帯は条里制水田に由来する畦の形状や、田越し灌漑のための水路の取り回しなどが特徴的である。これらの畦や水路の形状や畦の組成(盛土畦と石組畦)がもたらす複雑な微環境構造が、当地の生物多様性の高さに寄与していると考えられる。これらの畦や水路が基盤整備によって破壊され、ハビタットや微環境が失われることは、当地の生物多様性の喪失に繋がり得る。

そこで、水田地帯に重点を置き、畦や水路などのハビタット間での種の多様性の比較(β多様性)や、さまざまな大分類群を網羅することによる群集レベルの多様性の記述に取り組んできた。今大会では地域の生物多様性のあり方をわかりやすく提示することを試み、結果を検討する。また、基盤整備によって発生すると予想される多様性の喪失について、影響が大きいと思われるハビタットや分類群に関する評価を試みる。

来聴者とは、残り時間の少ない中で地域住民に対して生物多様性のあり方やそれが失われることの意味を説明しうるか、多様性の喪失を最小限に食い止める方策はないのか、という点について情報交換し、議論したい。


日本生態学会