| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-128

長野県伊那盆地の水田地域に生息する絶滅危惧種ダルマガエルの食性に関する保全生態学的研究

*木田耕一(信州大・農),大窪久美子(信州大・農),四方圭一郎(飯田市美博)

ダルマガエルRana porosa brevipodaは東海から瀬戸内海沿岸の温暖な地域を主な分布地とし、かつては水田で身近に見られた普通種であったが、現在では個体数の減少が進行し、環境省により絶滅危惧II類に指定されている。伊那盆地は本種の分布の北限であると共に隔離分布地でもあり、県の絶滅危惧II類に指定されている。そこで本研究では伊那盆地における本種の生態的特性を解明し、保全策を検討するために、知見の少ない食性を把握し、またその環境条件との関係性を明らかにすることを目的に行った。

調査対象地の選定に際して、水田の畦畔上において踏査による個体数密度調査を行った。その結果、伊那盆地の水田4~5筆(185~200m2)を1地域として、本種の個体数密度の高い地域2ヶ所(A、B)、個体数密度の低い地域1ヶ所(C)の計3ヶ所を設定した。食性調査は各地域で約30個体のダルマガエルを捕獲し、強制嘔吐法により胃内容物を採取した。捕獲した個体は頭胴長および体重、性別を記録した後に放逐した。採取した胃内容物はエチルアルコールにつけて保存し、実体顕微鏡を用いて餌動物の同定、体長と個体数の計測を行った。また、環境条件調査として畦畔の土壌含水率と植生を調査した。さらに、各地域において本種の潜在的な餌資源である動物相を把握するため、スウィーピング法により主に昆虫相を捕獲し、同定および個体数の測定を行った。

胃内容物の総個体数はA、B、C地域で各々86、169、161個体であった。全地域に共通して出現した昆虫相はハチ目のアリ類とチョウ目の幼虫、コウチュウ目のゾウムシ類、ハエ目のハエ類であった。食性調査とスウィーピング調査の結果を比較したところ、類似性は低かった。発表では環境条件や本種のサイズとの関係性についても考察を行う予定である。


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