| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-147

サシバの生息地における止まり木の重要性

*河村詞朗(岩大院・農),東淳樹(岩大・農),糸川拓真,金子絵里,河端有里子(岩大院・農),大島和峰(元岩大院・農),津田健伍(元岩大・農)

サシバ(Butastur indicus)は中型の猛禽類で、春季に繁殖のために日本に渡来する夏鳥である。本種は谷津田と呼ばれる斜面林に挟まれた水田地帯を選好し、カエルやヘビ、昆虫類といった小動物を捕食するが、近年、開発や耕作放棄による谷津田の減少と劣化によりその個体数が激減している。そこで本研究では岩手県花巻市の本種の生息地において行動観察を行ない、その空間利用と生息地内の景観の関係性を把握することを目的とした。

本種の営巣が確認されている地域KGとSNの2地域において定点観察による行動調査を行ない、パーチ地点、採食地点、周辺の土地利用、構造物の位置を記録した。また、GIS(Micro image社 TNTmips)を用いパーチ地点をもとにした95%行動圏を計算した。調査地を50mのグリッドセルで分割し、その後セルごとのパーチの有無、各土地利用面積、林縁長、電柱の本数を計算した。解析には統計環境Rを用い、パーチの有無を応答変数、各土地利用面積、林縁長、電柱の面積を説明変数としたロジスティック回帰分析を行ない、その後AICに基づくモデル選択を行なった。

その結果、パーチの有無には電柱の本数の影響が最も大きく、パーチ選択に電柱が深く関係していることが明らかとなった。本種は待ち伏せ探索型の採食形態をとるため、止まり木の存在が採食行動において重要な要因となる。本調査地では電柱が止まり木としての機能を果たし、本種の空間利用に影響を及ぼしたと考えられる。

なお、本研究は文部科学省科学研究費補助金(課題番号19510231)の一部として行なった。


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