| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-148

水路改修工事がスジシマドジョウ小型種東海型の生息状況に与える影響の予測

*佐藤達也(三重大院生資),田中綾子(岐阜大地域),石崎大介(三重大院生資),小原大昇(三重大院生資),向井貴彦(岐阜大地域),淀太我(三重大院生資)

水田およびその周辺水路は,湿地や氾濫原で繁殖・成長する魚類にとっての重要な生息環境であるが,近年行われている水路のコンクリート護岸化等の圃場整備によって,その機能が急速に失われている.その結果,水田周辺に生息する魚類の多くが絶滅危惧種として環境省や各地方自治体のレッドリストに掲載されている.本研究では,岐阜県本巣市でコンクリート護岸工事が計画されている水田水路で多く確認されたスジシマドジョウ小型種東海型に着目し,工事前の生息状況の把握と,工事が本種の生息に与える影響の予測を試みた.

本種の生息状況調査として,工事予定水路とその周辺において2009年4月から12月にタモ網を用いた採集を毎月行った.春と秋にはイラストマータグを用いた標識再捕調査を行い,調査区間に17,600-28,539個体が生息することが推定された.また,毎月の調査によって,本種は灌漑にあわせて通常の生息場所である河川本流から水田脇の工事予定水路へ遡上し,6月頃に当該水路で産卵すると考えられた.9月にライントランセクト法を用いたマイクロハビタット調査を実施し,本種の出現予測モデルを構築した結果,植物が多い川岸を表す環境において出現確率が高く,底質が粗くコンクリート構造物の存在する環境下では出現確率が低かった.さらに,産卵期に本種が遡上することが確認された水路がコンクリート護岸された場合の本種の出現予測確率は2割未満となり,本種の繁殖に重篤な影響を及ぼすことが示された.


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