| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-271

土砂流亡に伴う農地からの窒素・リン流出ポテンシャルと河川水質への影響評価

*三島慎一郎, 神山和則(農環研)

【はじめに】化学肥料や堆肥の形で窒素(N)・リン(P)が人為的に多量に投入される農地は、集水域でのN,P負荷のホットスポットであり河川水質への影響が懸念される。本研究では農業生産において余剰となるN,Pと農地土壌の土砂流亡ポテンシャルによる河川へのN,P負荷の指標を構築し、妥当性を検討した。【方法】三島と神山(2009)による、各都道府県での水田など6作目の土壌表面収支法によるN,P過剰と乳牛など5畜種の未利用となるふん尿のN,P量、神山(2007)3次メッシュ農業統計と3次メッシュ土壌侵食ポテンシャル地図を使い、各3次メッシュ単位でN,Pの農業生産からの流亡ポテンシャルを算出した。これをN,P負荷の指標(EN, EP)とした。指標は集水域単位で積算した。農地を持つ集水域を流れる河川の出口にある観測点でのN,P流量(TN,TP)を求めた。指標の集水域単位での積算値と観測点でのN,P流量の相関をとり妥当性を検討した。【結果】N,P負荷の指標は農業生産によるN,P余剰と土砂流亡ポテンシャルによってばらつき、指標と観測点でのN,P流量(TN, TP)との間には、TN=3943+0.03375EN R=0.4013、TP=253.7+0.003253EP R=0.3665 (共にp<0.001, n=1207)の関係があった。【考察】当年あたりのN,P余剰はN, P index(Bechmann et al. 2009)の要素ではあるが、土壌のP含有率もまた要素であることから、精度向上には土壌に保持されているN,Pの量も勘案すべきであるかもしれない。しかし、有意な相関が認められ、回帰式の傾きは有意に0とは異なることから、EN, EPは一定の環境影響指標としては利用できるものと考えられる。今後は農業でのN,P利用が水・大気環境へ与える影響を総合的にとらえる指数を構築する要素として利用したい。


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