| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-277

山岳域の冷温帯常緑針葉樹林におけるCO2フラックスの環境応答

*斎藤琢, 玉川一郎, 村岡裕由(岐阜大・流域圏), 李娜研(韓国・国立公園),八代裕一郎(岐阜大・流域圏), 小泉博(早稲田大・教育)

スギ・ヒノキが優先する常緑針葉樹林は日本の森林面積の30%を占めるため、日本の森林炭素循環においてとくに重要な植生であると考えられる。しかし、その多くが山岳地域に存在するため、渦相関法による計測が困難であり、森林-大気間のCO2交換量に関する報告は極めて少なく、とくに冷温帯地域における報告は皆無である。そこで本研究では、日本の中部山岳域に位置するAsiaFluxTKCサイトを対象として、2006年1月から2007年12月の2年に渡る渦相関法によるCO2フラックス計測データを用いて、30〜50年生のスギ・ヒノキが優先する冷温帯常緑針葉樹林における総一次生産量(GPP)、生態系呼吸量(RE)、純生態系交換量(NEE)の環境応答について調査した。山岳域におけるフラックス計測の不確かさの影響を回避するために摩擦速度閾値法とvan Gorsel法による相互検証を行った結果、以下が明らかとなった。(1)GPP、REは湿潤年(2006年)に比べて乾燥年(2007年)が少なくとも6%高く、NEEは両年で同程度の値となり、計測期間において土壌の乾燥は最も乾燥した月を除いて重要な環境因子ではない。(2)湿潤年、乾燥年ではGPPは春(4-5月)、REは夏(6月-9月)に明瞭な違いがあり、 両年の春のGPPの20%以上の差は冬季の気温と融雪のタイミングの違い(春の光合成能力に影響)および春のPPFDの違いの影響を受ける。(3)本研究サイトは年平均気温が低い冷温帯林であるがアジアの温帯、冷帯地域の森林と比較してGPP,REは比較的高い。


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