| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-293

窒素無機化のホットスポットとしてのヒトツモンミミズとキシャヤスデの糞の比較

*京島達也,川口達也,藤巻玲路,仁科一哉,金子信博(横浜国大,環境情報)

土壌では、土壌動物によって排泄された有機物に含まれる栄養塩は、一部は微生物に利用されつつ、植物に利用可能となる。ヒトツモンミミズは、糞を地表や土壌間隙に排出することで、土壌構造を改変する。キシャヤスデは8年に一度に局地的に大発生するため、摂食・排糞活動による影響が大きい種である。これらの糞中には有機物が豊富なため、排泄直後から微生物によって分解が盛んに起こるが、糞は、土壌動物の移動後や死後も長期にわたって地表に残る。したがって、これらの種の排糞活動は有機物の動態や微生物の活動に影響を与え、窒素循環に大きく関わることが考えられる。そこで、糞の無機態窒素動態を明らかにするために実験室内で28日間測定した。排糞直後の糞のアンモニア態窒素の濃度は、ミミズでは、細土の約20倍、ヤスデでは、細土の約99倍であった。また、個体重あたりの糞の窒素排泄量は、ヤスデのほうが多かった。糞のアンモニア態窒素の経時変化を比較すると、ミミズの糞は、時間が経つにつれて減少したが、ヤスデの糞は28日目まで排糞直後と同程度の濃度を示した。糞の硝酸態窒素濃度は、細土と比べてそれぞれ少なかった。糞の硝酸態窒素の濃度は、それぞれ時間が経つにつれて増加した。28日目では、ミミズの硝化率は、88%で、ヤスデは、48%であった。したがって、同じように土壌を摂食する大型土壌動物のヒトツモンミミズとキシャヤスデの糞は、土壌中の無機態窒素のホットスポットであるが、両者の硝化プロセスは大きく異なっていた。


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