| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-312

炭素・窒素安定同位体比分析を用いた瀬戸内海海域における食物網構造の解明

*松元一将,柴田淳也(愛媛大・沿岸研セ),曽我部篤(広島大・生物圏科学),浜岡秀樹,南口哲也,磯中竜一,國弘忠生,大西秀次郎,大森浩二(愛媛大・沿岸研セ)

瀬戸内海は閉鎖性海域であり、陸域からの栄養塩流入の影響を受けて生物生産性が高いことで知られている。また水深が浅い瀬戸内海は底生一次生産量も多いと考えられることから、表層一次生産が主な有機物源となる外洋の食物網構造よりも複雑になると考えられる。瀬戸内海における沿岸生態系の構造を解明するにはその食物網構造を明らかにすることが必要であるが、大阪湾や広島湾など一部の海域で研究が行われているのみで、瀬戸内海全域で一次生産者から高次捕食者までの食物網構造を解明したものはない。食物網構造を解明する手法として、近年多くの研究に用いられるようになってきたのが窒素・炭素安定同位体比分析法である。この手法は捕食者と餌生物の間で、一定の割合で窒素・炭素安定同位体比が変化することを利用して各生物の栄養段階や依存する有機物源を解析するものである。本研究では瀬戸内海の海域環境特性が異なる湾や灘など9つの海域において、安定同位体比分析を用いた食物網構造の解析を行った。

その結果、瀬戸内海の全海域において最高次捕食者の魚食魚やプランクトン食者のカタクチイワシ等に対しても底生生産を起源とする有機物が寄与していることが示唆された。また、最高次捕食者の栄養段階はその海域の食物連鎖長であると考えられるが、海域間の食物連鎖長は海域によって異なることが分かった。本発表では、このような海域間でみられた食物連鎖長など食物網構造の違いが生じた要因について考察する。


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