| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-320

北方落葉樹林における斜面方位と樹木の窒素利用の関係

*前田由香(九大生資),菱拓雄,田代直明,久米篤(九大北演)

樹木の成長や分布は土壌からの水分や養分の獲得条件の影響を強く受け,生態系の生産性はしばしば群落の養分獲得に律速されている。よって,各立地における樹種ごとの窒素利用様式の違いや,斜面の向きや斜面上の位置のような立地条件は,日射量や集水面積の違いなどとも複合して森林群落の生産性や地域植生に違いをもたらす重要な要因である。そこで,樹種および群落ごとの葉の窒素利用様式の違いを,十勝地方の丘陵地に成立した落葉広葉樹の天然林,カラマツの人工林で立地条件別に比較した。土壌のCN比は天然林,人工林に関わらず,南斜面>北斜面≧谷部の順に高かった。群落構造は天然林の植生,人工林の下層植生ともに,斜面方位や斜面上の位置の違いによって植生が著しく異なることが示された。葉のリターフォール量は,南向き斜面ではミズナラが大半を占めていた。また,北向き斜面ではオオバボダイジュ,アサダ,エゾイタヤなど様々な樹木が占めていた。谷部ではハルニレ,ヤチダモなど特有の樹種が多くを占めていた。各立地の樹木の葉の窒素の引き戻し量,葉のリターの窒素濃度は樹種によって様々であり,立地間での有意差は見られなかった。ミズナラの葉のリターの窒素濃度は,他の優占種に比べて低かった。リターフォール量は各立地でほぼ一定だった。葉の窒素利用効率(Leaf level NUE)は南向き斜面がもっとも高く,北向き斜面と谷部では低かった。以上より,斜面の向きや斜面上の位置によって異なる土壌環境に対して群落の窒素利用効率が異なっているため,湿潤立地から乾燥立地まで同じようなリターフォール生産量であることがわかった。


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