| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-321

丹沢山地における表土流失と窒素負荷が土壌生物活性及び窒素流亡に与える影響 -マイクロコズムを用いた生態影響評価-

*和田徳之,金子信博(横浜国大院・環境情報)

神奈川県の丹沢山地ではシカの採食による林床植生の衰退や、土壌侵食が問題となっている。また、都市圏が近く、大気汚染由来の窒素降下物量の増加とその森林生態系への影響が懸念されている。表土流失や窒素降下物は土壌の理化学性を担う土壌生物に影響を与え、さらに、渓流水への窒素流亡を増加させる可能性がある。そこで本研究では土壌生物活性と窒素流亡への影響をマイクロコズム実験から明らかにする事を目的にした。

山梨県南都留郡道志村にある横浜市の水源かん養林から円筒(直径15.5 cm長さ15 cm)を用いて、土壌を非破壊で抜き取り採取した。土壌侵食の状態を再現するためAo+A+B層(YO)とA+B層(YA)、B層のみ(YB)の土壌カラムを作成し、6週間環境制御室で培養した。0, 10, 50 kg N/ha/yrに相当する窒素溶液を試験期間分の窒素量に合わせて散布し、1週間おきに土壌カラム下部から排出される重力水を採取して無機態窒素(DIN、アンモニウム態窒素+硝酸態窒素)、溶存有機態窒素(DON)の測定をした。また、微生物活性を見るため土壌呼吸量、溶存有機態炭素(DOC)、アンモニア化成速度、硝化速度の測定をした。

重力水中の窒素量の経時変化では、どの処理区でも増加する傾向が見られた。排出率に換算して求めた結果、表土流失と窒素負荷、その相互作用による影響は見られなかった。土壌呼吸量は表土流失と窒素負荷で減少したが、相互作用は見られなかった。DOC、アンモニア化成速度、硝化速度は窒素負荷により一部の処理区で減少した。マイクロコズムを用いた短期間の試験では窒素流亡に対して影響は見られなかったが、土壌微生物活性の低下を確認した。窒素負荷による森林生態系の物質循環への影響を考える際には表土の状態も合わせて検討する必要がある


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