| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S14-1

新世代遺伝手法の歴史的背景と進化学・生態学へのインパクト

清水健太郎(チューリッヒ大)

次世代シークエンサーやマイクロアレイなどの遺伝学的手法により、ギガベースのオーダーの塩基配列、そしてゲノムワイドな多型が比較的容易に得られるようになってきている。医学的応用として、ヒト各個人のゲノムワイドな多型の検出を目標として、技術開発とコストダウンが進められている。一方、これらの技術は生態学・進化学に大きな可能性を提供する。例えば、これまで生態・進化学的な研究が蓄積してきた一方で、ゲノム情報が少なかったいわゆる「非モデル生物」についても、ゲノム情報を用いて適応の分子基盤を探ることが可能になるだろう。また、微生物群集の同定やメタゲノム研究も次世代シークエンサーによって促進されている。こうした大量のゲノムデータが得られる時代になり、Freeman & Herronは教科書'Evolutionary analysis' (4th ed. 2007)の中で、 'New data, new questions'という節を設け、進化・生態学の研究アプローチとして仮説検証型研究のみならず、まずデータを得てから仮説を探すというアプローチもますます有意義になるだろうと論じている。

我々のグループでは、Roche 454 次世代シークエンサーを用いて、食虫植物の消化液の微生物群集の解析を行っている。低pHで昆虫を消化する環境のため、植物の胃とも呼ばれる。旧来の培養・クローニングによるアプローチではごく一部のバクテリアしか同定できないというバイアスが大きかったが、リボソーム配列をPCRで増幅して直接次世代シークエンサーを利用することで、1000を超えるOTUからなる多様性の高い群集であることが分かった。また、非モデル生物のゲノムワイドな発現解析の可能性についても論じたい。


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