| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T04-1

海洋動物プランクトンの代謝活性: グローバルモデルの確立に向けて

西部 裕一郎(東大・海洋研)

海洋において動物プランクトンは遍在的に分布しており、莫大な生物量を有する。そのため、海洋が二酸化炭素の吸収源として注目されている今日、動物プランクトンの代謝が生態系の炭素循環において果たす機能を理解することは益々重要になっている。海洋動物プランクトンの個体レベルでの呼吸速度(酸素消費速度)には、様々な物理的、化学的、生物的要因が影響することが知られているが、熱帯から極海の表層に生息する多様な動物プランクトン(8門143種)の呼吸速度を統合的に解析した研究によって、分類群や種には殆ど関係なく、呼吸速度の変動の90%以上が体重と生息水温によって説明できることが明らかにされている。また、これらの資料に基づいて、海洋動物プランクトンの呼吸速度-体重-生息水温の関係はグローバルモデルとして定式化されており、群集代謝を推定する際に多く使用されている。さらに、最近の研究では、海洋の中・深層(水深500 m以深)に生息する動物プランクトンの呼吸速度は、同水温条件下での表層性種の値と比較して1/3〜1/2程度であることが報告されており、これらの点を加味したグローバル・バシメトリックモデル(生息深度と酸素飽和度をパラメーターに追加)も提出されている。本発表では、はじめに、海洋動物プランクトンの代謝活性、特に呼吸速度に関して、その測定手法、温度依存性、体サイズとの関係について、これまでの研究を概説する。さらに、上述のグローバルモデルを用いて海洋動物プランクトンの群集代謝を推定した研究例についても紹介する。


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