| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T22-2

農法とアグロエコロジー〜モンスーンアジアを事例として〜

宮浦理恵 (東京農業大学・国際食料情報学部)

農法は、農の営みとしての生産技術様式と経営様式の二側面からなる概念である。作物の栽培や家畜の肥育管理技術、作付け様式、作付け体系、有畜複合や地域輪作等、これまでの農学、農業経済学および地域研究のフィールドワークによって得られた成果を、個体、圃場、農場および地域の各レベルで整理し、アグロエコロジカルに再考察することに挑む。

これまで地域研究では、地域の言語を駆使しながら、生活、生業、文化、社会の実態を調査し、地域の独自性や共通性を解明してきた。そこで蓄積された農の営みの中には、アグロエコロジーの視点から再解析すると、地域を越えて世界の別の地域で同様に存在するものが散見される。モンスーンアジア地域に主軸を置きつつ、それぞれの地域での事例をアグロエコロジカルにとらえ、地域を越えた普遍性と特異性を掌握することが、持続的農業あるいは持続的食料システムを追及していく上で、今まさに必要な課題である。

たとえば、新たなビジネスとしての商品作物栽培は導入種や改良品種を用いた体系によって展開される。モンスーンアジアで伝統的に行われてきた稲作の知恵と技術が、中南米で展開される新規開発の稲作に応用され、また、中南米の伝統的トウモロコシ栽培の技術が世界のトウモロコシ生産に適用されるようになれば、大規模バイオビジネスから小規模家族経営に至るまで、多様な農法と食料生産・消費システムが深化し、それぞれの地域に適した持続性のあり方が生み出されるであろう。アグロエコロジーの進展によって、世界の食料生産が持続的で地域の生活に活気をもたらすような体系に生まれ変わることが期待される。


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