| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-176

奥能登のため池の水質と生物多様性

*久米篤(九大・農院),石田幸恵(富山大・理),西原昇吾(東大・農学生命),赤石大輔(NPOおらっちゃ),佐竹洋(富山大・理),張勁(富山 大・理),中村浩二(金沢大・理),鷲谷いづみ(東大・農学生命)

溜め池が農業に重要な役割を持つ石川県奥能登において,様々な条件の溜め池の水質について1年間を通して計測し,その変動様式を解析し水質の決定要因や生物多様性に及ぼす影響を評価した.石川県の奥能登には地形的位置や利用状況が異なる溜め池が多く近接して点在し,その一部は現在も稲作に利用されている.そこで,地質の違い,集水域の違い,地形の違いに着目してサンプリングし,溜め池の水質特性を解析した.水質の調査項目は,pH,温度,電気伝導度(EC),クロロフィルa,イオン成分(Na+,NH4+,K+,Mg2+,Ca2+,Cl-,NO3-,SO42-),ケイ酸,溶存態・懸濁態全リン,酸素同位体(δ18O)である.各池の水質は,季節的な変化よりかは池間の違いの方が大きかった.このことは,狭い範囲に隣接して存在している溜め池であっても,その池固有の水の個性がはっきりしていることを示唆している.池の水質と生物種数との関係を解析した結果,大型水生植物やColeopteraは,農業活動の影響が少なく,地下水の流入や外部との水の出入りの少ない比較的孤立した池に多く見られる傾向があった.pHと種多様性の間には明確な一山型の関係が見られ,中性から弱酸性にピークがあり,pH5.0以下あるいはpH7.5以上の池では種数が急激に減少した.これらの結果は,溜め池の生物相を考える上で水質は非常に重要な要素であることを示した.


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