| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-10 (Oral presentation)

モミ-イヌブナ林の50年間の林分構造の変化

*若松伸彦(横浜国大), 菊池多賀夫(横浜国大), 石田祐子(東京農大), 深町篤子 (東京農工大), 比嘉基紀(森林総研), 新井千乃(横浜国大), 吉田圭一郎 (横浜国大)

本研究の目的は東北地方丘陵地に分布するモミ-イヌブナ林の50年間の森林動態を明らかにすることである.1961年に青葉山丘陵のモミ-イヌブナ林内に20m×150mの調査区を設置し,胸高直径1cm以上の個体を対象に毎木調査を行った.1981年と2011年に個体位置をもとに生存個体を追跡し,新規加入個体とあわせて同様の調査を行った.調査地には1961年にモミ,イヌブナを含む樹木種42種(常緑針葉樹3種、落葉広葉樹38種、常緑広葉樹1種),計799個体が出現した.林冠ではモミが優占し(RBA53%),イヌブナを含む主要落葉広葉樹のRBAは合計32%であった.1961年からの50年間で,モミの個体数は増加したが,イヌブナをはじめ落葉広葉樹種のほとんどは個体数を減じており,調査地全体では樹木個体数は27%減少(2011年:583個体)した.BAはモミ,イヌブナ,および林冠を構成する主要な落葉広葉樹で増加しており,全体では68%増加した(1961年:9.3m2,1981年:12.62m2,2011年:15.67m2).ただし,林冠優占種のモミやイヌブナのRBAは50年間でほとんど変化がなかった.モミの胸高直径階分布は50年間を通して逆J字型を示した.特に1981年以降の30年間は,小径木の新規加入によってその傾向はより顕著であった.一方,イヌブナなどの主要落葉広葉樹種は1961年には明瞭な逆J字型を示したが ,その後は小径木の減少に伴い一山型分布の傾向を示した. 調査したモミ−イヌブナ林では,林冠木の種組成や主要な樹木の相対優占度は50年間維持されてきたが,種毎の更新特性の違いを反映した林分構造の変化がみられた.


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