| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-18 (Oral presentation)

野外におけるPAR測定の意義と必要とされるセンサ

*久米篤(九州大・北演), 秋津朋子(筑波大・生命科学), 片山博之(日本環境計測), 奈佐原顕郎(筑波大・生命科学)

McCree(1972)は,PAR(光合成有効放射)の評価に400~700nmのPPFD(光量子フラックス密度)を用いることで,実用的な評価が行えることを確認した.現在,様々なPARセンサが販売されているが,それらのセンサの材質や構造は様々であり,日射計などとは異なり国際標準も規定されていない.従来の植物生態学的な観点では,PARセンサは絶対値の測定よりかは,植生内外での相対強度の測定に用いられることが多く,絶対値精度が必要とされる場面は少なかった.しかし,近年のリモセン技術の発達や,群落観測の高度化によって,誤差数%以内の高精度なPAR地上観測が求められるようになり,様々な精度管理上の問題点が明らかになってきた.そこで,これまでのPARセンサの信頼性や問題点を確認し,国際的に通用するフィールド対応型PAR計測のガイドライン,すなわち,長期間, 高精度の地上観測を行うためのプロトコルを整備し提案することを目的として研究を進めた.まず,PARの校正基準として,慎重に校正・確認すれば市販のマルチスペクトルセンサ(Eko-MS700)が利用でき,全天日射のPAR/日射エネルギー比は,校正に利用できる程度に一定(約0.45)であることを明らかにした.次に,主な市販PARセンサを複数購入し,各社の試作品も含めて,実際に様々な野外環境(天候,植生タイプ)において測定し,ソーラーシミュレータによる測定結果も踏まえ問題点を解析した.その結果,測定精度に及ぼす最も影響の大きな要因はセンサの入射角特性(コサイン特性)であり,次に,センサ表面の汚れおよび拡散板・フィルタの劣化,そしてデータロガーの精度であった.一方,従来から問題として指摘されてきた分光感度特性の影響は植生内においても小さく,フィルター特性やセルタイプ(Siセル,GaAsセル)の違いにかかわらず,実質的な差は無かった.


日本生態学会