| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) I1-06 (Oral presentation)

奄美地方における豪雨二次災害と植生の関係

*小林悟志(極地研・新領域),南佳孝(情報研)

近年、奄美地方では豪雨災害による土砂崩れが頻発している。特にリュウキュウマツ群落周辺に土砂崩れが頻発する傾向にある。また、この3年間で加計呂麻島のリュウキュウマツは松食い虫によってほとんどの個体が枯れた。現在、松枯れは、奄美大島の南側から北上し奄美市にまで、その広がりをみせている。松枯れが起きた個体は伐採処置が追いついておらず、枯れるにまかしている。それによって治水能力の低下した土壌は豪雨によって危険性を増す可能性がある。

本研究調査では、2010 年10月と2011年11月に起きた豪雨きた降水量と、土砂崩れが起きた場所についての植生調査を行い。奄美大島の植生図に照らし合わせ、土砂崩れの起きる傾向を保全生態の観点から明らかにすることを目的とする。

松枯れについては、3年以降に枯れた個体は枝がほとんどなく幹のみ、あるいは白骨化し、2年前に枯れたマツは葉が落ち枝のみ。今年枯れたマツは、葉が残っている状態として認識することができる。その状況を画像データで収集し確認することで、おおよその松枯れ進行の広がりが把握できる。

その結果、加計呂麻島のマツ個体の胸高直径15cm以上のリュウキュウマツのほとんどは、3年前に枯れており、2年前から今年にかけては胸高直径15cm以下の個体にもマツ枯れが進行している。奄美大島については、瀬戸内町は、今年の松枯れでほぼ壊滅状態となり、現在、太平洋側の松枯れ進行が進み名瀬市街地付近に進行が北上し、宇検村や大和村の東シナ海側では3割ほどの松枯れ進行となっている。

豪雨の土砂災害については、起きた場所と植生図を照らしあわせてみると、マツの人工林、シイとマツの混合林で頻度に起こっていることが分かり、一方でソテツやマツ個体が存在していない天然生二次林においては、ほとんど土砂崩れが起こっていないことが明らかになった。


日本生態学会