| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L1-10 (Oral presentation)

越後平野におけるモグラ2種の分布と環境要因

大野浩史・石田寛明(富山大学大学院理工学教育部)・*横畑泰志(富山大学理工学研究部)

新潟県越後平野の186箇所でモグラの坑道径を計測し、それを指標に大型種エチゴモグラ(Mogera etigo;以後エチゴ)と小型種アズマモグラ(M. imaizumii;以後アズマ)の分布を調べた。その結果、阿賀野市・新発田市東部に過去に記載されていないエチゴの分布域があり、そこでは2種がモザイク状に分布していること、また五泉市付近にモグラの空白地帯があること、二次圃場整備が行われると空白地帯ができること、整備後でも近くにモグラがいれば再侵入できることが示された。また、各調査地で貫入式土壌硬度計(大起理化工業株式会社製)を用いて計測した深度ごとの土壌硬度を説明変数、生息しているモグラの有無と種を目的変数として正準判別分析を行った。散布図上では、1軸上でエチゴと他2者、2軸上でアズマと空白地帯が区別されたが、3者間、特にアズマと他2者間で大きな重複がみられた。これにより、アズマがエチゴの分布域や空白地帯の環境下でも生息できること、土壌硬度による両種の明確な住み分けが行われていないことが示され、5 ~ 20 cmの浅層の土壌硬度が生息する種に強く影響しているようであった。さらに、新潟市西区佐潟でエチゴ2頭のラジオトラッキングを行った(発信器:ATS社製A-2440)。2頭の行動圏面積は最外郭法で2505m2 および5470m2 となり、エチゴの生息にはアズマよりもはるかに広い土地が必要な可能性が示唆された(富山・岐阜県産アズマ4頭の行動圏は459 〜 776 m2;吉村ら、2008;大野ら、2011;ともに日本哺乳類学会大会講演要旨集)。以上のことから、現在、越後平野中央部ではエチゴが優占しているが、今後、アズマがエチゴの分布域に侵入していくと考えられる。


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