| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


シンポジウム S10-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

趣旨説明

多田満(国環研)

21世紀は、人類の持続可能な安定した社会を保障する「環境と福祉の世紀」になることが期待される。その環境主義(環境と福祉)への転換のきっかけとなったのが、レイチェル・カーソン(Rachel Carson, 1907-1964)の『沈黙の春(Silent Spring)』(1962)の出版である。当時、カーソンは『沈黙の春』を書いただけでなく、「単独で生きるものは何もない」という考え方を裏づける、生態学という新しい科学の存在を強調した。それはまた、後に「海の三部作」と呼ばれる、『潮風の下で(Under the Sea-Wind)』(1941)、『われらをめぐる海(The Sea Around Us)』(1951)、『海辺(The Edge of the Sea)』(1955)からも読み取ることができる。一方で『沈黙の春』には、「いかに生きていくか」を問うエコロジーの視点がはっきりと現れている。

本企画では、まず、『沈黙の春』出版50年を振り返り、未来に向けてその概要を示す。次に「海の三部作」と『沈黙の春』について文学(エコロジー)と生態学からそれぞれ読み解く。そして、これらカーソンの作品を環境教育から考える。最後に、生態学と文学、環境教育の協働による新たな展開について議論を進めたい。


日本生態学会