| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T10-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

意思決定に必要なデータ収集と解析~シカ・イノシシ保護管理における意思決定支援システムの構築を例に~

岸本康誉・坂田宏志(兵庫県立大学)

意思決定支援のための作業体系は、「データの収集体系の整備」から、「データの処理や解析」、さらには、「データと解析結果に基づいた意思決定」と、これらのシステムのフィードバックにより構築されていると言える。収集されたデータに基づく意思決定支援を行うために、これらの作業の体系化は、いずれの分野においても必要不可欠である。しかし、有効な指標や分析手法に加え、意思決定までの一連のプロセスが十分に確立していないことが、多くの分野で共通した課題となっている。

演者らは、兵庫県で野生動物管理に関する研究を進めていく中で、ニホンジカについて、約10年間にわたり継続的かつ広域的に収集してきたデータに基づき、状態空間モデルによる頑健性の高い統計手法を用いて、推定個体数の見直しと捕獲計画に基づく将来予測を行ってきた。また、シカによる農業や森林生態系への被害軽減のために必要な目標捕獲頭数と継続した捕獲の必要性について、様々な意思決定の場で、それに係るアウトプットを提供し続けてきた。その結果、シカの個体数調整に係る予算が約3倍に増加するとともに、新規施策が事業化され、翌年には、目標頭数を上回る捕獲を実現した。さらに、これらのデータ収集から分析、将来予測、意思決定までの一連のプロセスを再構築し、作業の効率化を図るとともに、全国の都道府県レベルで実行可能なシステムの開発とそのパッケージ化を進めてきた。本講演では、これらのシステムの概要を紹介するとともに、時間的に変動するデータの質に対応しつつ、継続的な意思決定支援を進めていくために、生態学者と行政機関などの意思決定機関がどのように連携していくべきかについて議論したい。


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