| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-122 (Poster presentation)

セイタカアワダチソウの花に関わる生物間相互作用

*池本美都(京大生態研),大串隆之(京大生態研)

多年生植物は長い寿命の中で、生物的、非生物的なさまざまな要因の作用を受けている。植物が過去に受けた作用の履歴効果を検出することは困難であるが、近年の研究で、年を経ても過去の相互作用の影響が植物の形質を変えることが明らかになってきた。たとえば、過去に一度行われた窒素肥料の施肥は、数年後の植物の生長を促進させる。また、数年間食害を受け続けた植物は、1年間だけ食害を受けたものより、サイズが減少する。しかし、こういった過去の食害の効果が花形質に与える影響については、未だ明らかではない。花形質は植物の繁殖成功に重要なものあり、また当年の葉の食害は花形質に負の影響を及ぼすことが知られている。そこで本研究では、多年生植物の花形質に対する過去の葉の食害履歴の効果を検証した。

2010年と2011年の2年間、京都大学生態学研究センターの実験圃場にて、操作実験を行った。材料は多年生草本であるセイタカアワチソウとその植食性昆虫アワダチソウグンバイとした。食害履歴の効果として(1)持ちこしの効果(carryover effect)と(2)集積の効果(cumulative effect)を検証した。2011年、「持ちこしの効果」の検証のため、2010年にグンバイを接種した株と、非接種の株の花の大きさ、花の枝数、総バイオマスに対する花重を比較した。その結果、いずれの形質においても処理間で違いはみられなかった。次に、「集積の効果」について検証するため、1年目(2010)に食害を与えた株と1年目と2年目(2010~2011)に食害を与えた株の花形質を比較した。その結果、食害を2年受けた株では、花の大きさ、花の枝数、総バイオマスに対する花重が減少した。

以上から、セイタカアワダチソウの花形質に対する食害履歴に関し、持ちこしの効果からは有意な影響は検出されなかった。一方、集積の効果は負の効果を及ぼすことがわかった。


日本生態学会