| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-137 (Poster presentation)

異なる送粉者相に対応したタカクマヒキオコシ群(シソ科)の花筒長変異

星野佑介,堂囿いくみ(学芸大・教育),鈴木和雄(徳島大)

植物の花形質は地理的変異が見られることが多い。環境が場所によって異なるとき、花形質への選択圧の強さや方向が地域ごとに変化し、花形質の地理的な変異がもたらされると予想される。

シソ科ヤマハッカ属タカクマヒキオコシ群は、筒状の花の長さに地理的な変異が見られる(4-12mm)。送粉者は2種のマルハナバチであり、この2種は口吻長と生息標高に違いが見られる。ミヤママルハナバチは口吻が短く(8-12mm)、山地性であるが(800-1500m)、トラマルハナバチは口吻が長く(10-17mm)、低地から低山地(100-1200m)に生息する。タカクマヒキコシ群の花筒長分化に影響している環境要因は、標高による送粉者相の違いであると考えられる。そこで本研究では、標高と送粉者相が花筒長分化にどのように影響しているか明らかにすることを目的とした。調査は兵庫県氷ノ山周辺において、標高の異なる集団において(2010年・11集団、2012年・8集団)、花筒長・マルハナバチの訪花頻度・自然受粉による種子生産・1回訪花による種子生産(送粉効率)を測定した。

その結果、花筒長は標高が高くなるほど短くなる傾向がみられた。2種のマルハナバチの訪花頻度は集団によって異なっており、ミヤママルハナバチは高標高集団でのみ見られたが、年変動が大きかった。自然受粉による種子生産は、花筒の長い低標高集団で高い傾向があった。また、自然受粉による種子生産は、盗蜜者の訪花頻度が高いと低くなる傾向があった。1回訪花による種子生産は、花筒長・送粉者種による違いは見られなかった。集団間の花筒長分化には2種の送粉者の訪花頻度が関係していると考えられる。


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