| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-142 (Poster presentation)

九州大学伊都キャンパス内林床移植地におけるポリネーションネットワーク構造の解析

*寺本健太郎,桒田康輔,矢原徹一(九大・生態研)

自然界における生物間相互作用の解析に有効な方法として、ネットワークのモジュール性解析がある。この方法を用いて、ネットワークの持続性に重要なハブ種を、ネットワーク構成生物種の中から特定することができる。本研究ではこの方法をポリネーションネットワークに適用した。この適用に当たって、季節変化に伴ったネットワーク構造の変化にも注目した。九州大学伊都キャンパス内にある林床移植地において、デジタルカメラによるインターバル撮影によって、昼夜を通じて、どの花にどの昆虫がどの程度訪問するかを記録した。調査は、樹木類43種について、2011年3月から8月まで行った。観察されたポリネーターは146種類であった。得られたデータから、樹木類の開花フェノロジーを基にして調査期間を4つの季節に区切り、各季節のネットワークと4季節をまとめた全ネットワークについて解析を行い、モジュールを検出した。さらに、モジュール内依存性とモジュール間連結性という2指標を用いてハブとコネクター(モジュール間をつなぐ働きを持つ種)を特定した。各季節のネットワークはモジュール性を持ち、クサイチゴやゴンズイ、サンゴジュ、タラノキなどの植物種が季節的ハブとして検出された。さらに、コネクターとして複数の植物種とポリネーター種が検出された。コネクターであるポリネーター種は活動期間が長く、複数の季節においてハブ種の植物を訪花していた。そして、全ネットワークで検出されたハブ種は、4つすべての季節から選ばれ、各季節ではハブまたはコネクターとしての役割を担っていた。これらの結果から、ネットワークの持続性においては、各季節のハブ種とともに、各季節をつなぐ活動期間が長いポリネーターの維持が重要であると考えられる。


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