| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-042 (Poster presentation)

マクロスケールにおけるミヤコザサ節の分布規定要因~ミヤコザサ節の分布は積雪深だけで説明できるのか?~

*津山幾太郎(森林総研),堀川真弘(TOYOTA バイオ緑化),中尾勝洋(森林総研),松井哲哉(森林総研・北海道),小南祐志(森林総研・関西),田中信行(森林総研)

少雪地域の林床優占種であるササ属ミヤコザサ節について,分布域全域を対象としたマクロスケールにおける,分布を規定する気候要因を明らかにすることを目的とした.

ミヤコザサ節の分布と気候要因との関係解析には,分類樹モデルを用いた.応答変数には,植物社会学ルルベデータベース(PRDB)から抽出したミヤコザサ節の在・不在データを用いた.説明変数には,暖かさの指数(WI),最寒月最低気温(TMC),最大積雪水量(MSW),夏期降水量(PRS),冬期降雨量(WR)を用いた.構築されたモデルから,現在の潜在生育域と,その中でも好適な地域(適域)を予測した.モデルの予測精度は,ROC解析と,PRDBとは独立のデータとの比較によって行った.

モデルの精度は良好であった.構築された分類樹モデルから,ミヤコザサ節の分布には,WIとMSWが特に重要な要因であることがわかった.ミヤコザサ節の潜在生育域は,WI<102.7℃・月を満たす地域に限定され,適域は,WI<84.8℃・月とより冷涼な環境に制限された.適域の多くは,これまで指摘されていた積雪条件とほぼ同じ条件(240.9mm<MSW;最大積雪深で60.2-80.3cmに相当)に分布したが,他の気候条件(36.7 ≦ WI< 84.8℃・月,WR<442.7 mm,PRS≧1135.5 mm)によっては,より多雪な環境(240.9≦MSW<513.7mm;最大積雪深で128.4-171.2cmに相当)まで分布することが明らかになった.

以上から,ミヤコザサ節の分布は,積雪深だけでは説明できず,WIを軸とした他の気候要因との複合的な条件で規定されることが示唆された.


日本生態学会