| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-064 (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林における野外温暖化実験:ミズナラ個葉の光合成・分光特性・フェノロジーに対する温度環境の影響

*村岡裕由(岐阜大・流域圏セ),庄司千佳(岐阜大・応用生物),永井信(JAMSTEC),野田響(筑波大・環境生命)

陸域生態系の炭素循環は地球環境調節の重要な機能であると同時に,生態系の生態学的機構の根幹をなすプロセスである。気候変動に対する森林生態系機能の応答や脆弱性の実験的解明と予測は重要な課題となっている。発表者らは最先端・次世代研究開発プログラムの一環として,冷温帯落葉広葉樹林の炭素吸収・放出過程に対する温度環境の影響解明を目指している。本発表では,岐阜大学・高山試験地(TKYサイト)でミズナラ(Quercus crispula)成木を対象として実施した野外温暖化実験の経過を報告する。

TKYサイトの林冠観測タワー(高さ約18m)が囲むミズナラ成木の樹冠の一部を2011年5月に開放型温室(Open-Top Canopy Chamber:OTCC)で囲い,温度の上昇(晴天時に約5度上昇)がミズナラ個葉の展葉・黄葉フェノロジー,および光合成・暗呼吸速度の温度反応にもたらす影響の調査を開始した。2012年には,展葉・黄葉フェノロジーを,葉長とクロロフィル含量指標(SPAD)の計測,ならびにデジタルカメラ画像のRGB解析によりモニタリングした。また個葉光合成・呼吸速度の温度依存性,ならびに個葉分光特性(光の透過,反射,吸収率)を季節を通じて測定した。

枝葉の加温は展葉開始日を約5日間早め,黄葉を約5日間遅らせた。クロロフィル含量と最大光合成速度(Amax)は季節を通じて温暖化区の方が高い傾向が続き,8月上旬のAmaxには約25%の差が生じた。ただし形態的特性(LMA)には差違は見られなかった。今後は温度環境の違いが生理生態学的特性への影響を介して林冠スケールでの光合成生産量に及ぼす影響をモデル解析するとともに,葉群に対する温暖化影響を分光観測により検出する手法を検討する。


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