| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-088 (Poster presentation)

ミズナラの幹の炭素・酸素安定同位体比と肥大成長の長期変化

鍋嶋 絵里(東京農工大・農)*, 久保 拓弥(北大・地球環境), 香川 聡(森林総研), 日浦 勉(北大・苫小牧研究林), 船田 良(東京農工大・農)

年輪を解析することにより、樹木の気象応答を長期にわたり明らかにできる。年輪からは肥大成長だけでなく、道管の数や面積などの解剖学的特性や、炭素・酸素安定同位体比による光合成水利用効率などの生理特性の変化の推定も行える。これまでにミズナラの成木を用いて肥大成長と解剖学的特性を解析した結果、年輪内の孔圏道管の数や面積および孔圏幅が最近の35年間で増加傾向にあることが示された。調査を行った苫小牧研究林では温暖化などの気候変化が認められているものの、上記の解剖学的変化の要因やメカニズムについては明らかではない。そこで本研究では、解剖学的特性の長期的な変化のメカニズムの一つとして、炭素・酸素安定同位体比を用いて光合成に関連する生理特性の変化を復元することを目的とした。

2004年に採取し、1970年から2004年までの35年間について年輪幅および孔圏道管の計測を行ったミズナラ成木のうち5個体について、同35年間の炭素・酸素安定同位体の分析を行った。各個体の年輪試料は薄片にして板状のままセルロースを抽出し、各年層を実体顕微鏡下で孔圏と孔圏外に切り分けて分析試料とした。これらの試料を用いて分析を行い、孔圏と孔圏外それぞれの炭素・酸素安定同位体比の35年分の変動を明らかにした。得られた結果から、各安定同位体比の長期変動傾向および炭素・酸素安定同位体比の変動パターンの違い、また各安定同位体比と孔圏幅や年輪幅との関係などについて解析を行い、孔圏部の長期変化に対して光合成などの生理特性の変化が関わっているかどうかを考察する。


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