| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-092 (Poster presentation)

高CO2環境で生育したカバノキ属3種の葉群光合成

*渡辺誠, 原悠子, 伊藤寛剛(北大院・農), 高木健太郎, 佐藤冬樹(北大・FSC), 小池孝良(北大院・農)

産業革命以降、大気CO2濃度の増加が続いており、森林の高CO2環境への応答が注目されている。ダケカンバ・ウダイカンバ・シラカンバは日本の冷温帯林を代表するカバノキ属であり、陽樹という類似した特性を持つ。高CO2によるこれら成長の速い先駆種の動態変化は、森林生態系に与える影響が大きい。本研究では、これら3種に対して野外条件に近い環境でCO2付加を行い、葉群のCO2収支を比較検討した。

実験は北海道大学北方生物圏フィールド科学センター札幌研究林に設置された開放系大気CO2増加装置を用いて行った。土壌は褐色森林土で, 対照区(CO2無付加、370-380 ppm)と高CO2区 (500 ppm、2040年頃を想定)の2段階のCO2処理区を設定した。カバノキ属3種の2年生苗を2010年6月から栽培し、3成長期目にあたる2012年に本調査を行った。2012年5月と11月に地際直径(D)と樹高(H)を測定した。6月から10月の期間に、3週間に1回の頻度で、各樹種の樹冠の葉面積指数(LAI)、光強度、葉の窒素含量を高さ50 cm毎に測定した。2012年7月下旬に各樹種の樹冠の様々な位置で光-光合成関係と窒素含量を調査し、窒素含量を指標とした光-光合成関係のモデリングを行った。得られた光合成モデルと、葉群の高さ別LAI、光強度、窒素含量を用いて、葉群全体の光合成と呼吸によるCO2収支を計算した。

2012年における個体の成長量(D2H)は、ダケカンバとシラカンバでは高CO2区で有意に増加したが、ウダイカンバでは増加しなかった。また、葉群のCO2収支に関しても個体成長と同様の傾向が認められ、ダケカンバとシラカンバのCO2吸収(光合成-呼吸)は高CO2環境で増加する傾向を示した。本研究発表では、葉群光合成量の詳細も報告する。


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