| 要旨トップ | ESJ60 企画集会 一覧 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T09 -- 3月6日 14:30-16:30 I会場

ニッチ構築としての動物の建築物

企画者: 上田恵介(立教大・理)

動物が体外につくる構造物は面白い。身体から直接、物質を分泌してつくられるクモの巣や鱗翅目昆虫や双翅目昆虫の幼虫の巣網から、自然界の材料を分泌物で接着してつくられるミノムシの巣や葉っぱを丸めてつくるオトシブミの筒,砂粒を集めたトビケラ類の筒状の巣、小さな生き物もいろんな建築物を造っている。 このように動物が構造物をつくって積極的に環境を変えることは,その動物が生きて、生活しているまわりに、新たなニッチをつくりだすことを意味する。それはその生物が所属する生物群集自身を改変する重要なプロセスである。これがニッチ構築の概念である。

 今回の集会では、動物が作る構造物を、「ニッチ構築」という観点から、5人の研究者に講演していただく。まず椎名佳の美氏には、自然界で他の鳥やケモノに、豊富なすみかを提供しているキツツキ類の巣穴について語って頂く。ついで那須義次氏と私で、鳥の巣にすむさまざまな鱗翅目昆虫をとりあげ、そのニッチとしての鳥の巣の意味を考察する。福井晶子氏には葉を綴るさまざまな昆虫類の建築行動に関する最近の研究をレビューして頂く。中田兼介氏にはクモの巣とその進化について述べて頂く。岡野淳一氏には、さまざまな形態を持つ水生昆虫トビケラの巣の機能について語って頂く。

 動物が構造物をつくることで、それまでになかったものが自然界に出現する。それは生態系にどんな意味を持ってくるのか。生態系において動物たちがつくるさまざまな構造物、建築物が他の生物のニッチとして、どのように機能しているか、その意味を考えてみたい。

[T09-1] 森の動物の棲み家としてのキツツキの樹洞 椎名佳の美(北大・生物圏科学)

[T09-2] 鱗翅目昆虫のニッチとしての鳥の巣 那須義次(大阪府農政室・病害虫防除グループ),*上田恵介(立教大・理)

[T09-3] リーフシェルターをめぐる生物間の相互作用:場所資源は余っているのか?  福井晶子(日本野鳥の会)

[T09-4] 昆虫にとってのクモの網:デストラップとしての建築物 中田兼介(京都女子大)


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