| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-093 (Poster presentation)

受粉成功確率の低い植物における性比モデル

*高田壮則(北大・地球環境),真坂和彦(北海道立総合研究機構林業試験場)

1:1の性比を説明するFisher(1930)の理論以来、一世紀にわたり、オス機能とメス機能にどのように資源を投資するか、という問題が数理モデルを用いて議論されてきている。例えば、 Hamilton (1967)による、Local mate competition に着目した昆虫のメスへの偏りを説明するESSモデルに始まり、Lloyd(1984)らによって開発された他殖植物の性表現を説明するESSモデルがあるが、それらのモデルでは、暗黙の仮定として、「すべての個体が同一の投資資源量をもち、同一の性比をもつ」とされているため、投資資源量の個体間変異がある場合には適用できなかった。実際、風媒花植物では個体サイズに応じて性表現が異なることがよく知られている。それに対して、投資資源量の分布に着目したゲームモデルがYamaguchi1985)によって提案されたが、実際の風媒花植物では雌株が存在するにもかかわらず、そのモデルの解(ナッシュ解)ではメス機能のみに投資する個体の存在を説明できていない。そこで本研究では、一般的な仮定をおいた新しいゲームモデルを提案し、解析を行った。i番目のメスの繁殖成功度をYamaguchiモデルにならい、Ii-xiとし(Iiは投資資源量、xiはオス投資量)、オスの繁殖成功度をmiΣ(Ii-xi)/Σmiとする。式中、mi=bxiaである。その結果、aが1以下である場合には、メスのみに投資するナッシュ解は存在しないこと、メスのみに投資するナッシュ解が存在する必要条件はaが1よりも大きいことがわかった。Yamaguchiモデルはa=1の場合に当たる。本講演では、その理由を明らかにするとともに、その例証として、a=2の解析を行った結果、さらに、ポアソン分布を用いた受粉成功確率が低い植物における性比モデルの解析を行った結果を報告する。


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