| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-095 (Poster presentation)

エゾヤマザクラ当年枝個体群の繁殖様式

長谷川成明(北大・低温研)

樹木の枝系は当年枝の繰り返しによって構成されており、当年枝の個体群とみなすことができる。多くの樹木において当年枝は葉を支え光合成において大きな役割を果たすと同時に、繁殖器官を生産している。このような成長と繁殖というトレードオフ関係にある二つの活動は、当年枝個体群を構成する様々なサイズの当年枝の間でどのように分担されているだろうか。本研究ではエゾヤマザクラを材料に、当年枝のサイズと、生産される花芽の数の関係性について調査し、個体としての繁殖戦略の観点から考察した。

エゾヤマザクラ(Prunus sargentii)は本州中部以北および北海道に生育する落葉高木種である。2010年5月に北海道大学キャンパス内に生育する3個体のエゾヤマザクラ個体の枝系各1本をランダムに選択し、枝系の先端から当年枝が50本以上含まれる分岐までを調査対象として、2010年から2013年にかけて追跡調査を行なった。

当年枝長と葉芽数との間には直線的な、花芽数との間には頭打ちの関係が見られたが、前年枝長との間には明確な関係性は見られず、過去の履歴が当年枝の繁殖に与える影響は小さいことが示唆された。繁殖量に年次変動がほとんど見られず、当年枝個体群の年次変動から推移確率行列を算出して解析を行なった結果、個体群サイズを拡大しながら安定的に繁殖量を確保しうることが示された。

これらの結果からエゾヤマザクラ当年枝個体群では効率的に空間を占有しながら毎年の繁殖量を確保する繁殖戦略を行なっていることが示唆された。


日本生態学会