| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-106 (Poster presentation)

植生復元において播種時期が草原生植物の発芽・定着状況に及ぼす影響

*山田晋(東京大・農),羽田野真寛(東京大・農)・安部真生(東京大・農),根本正之(東京大・農)

半自然草地は減少著しい立地であり,残存草地の保全のみならず,草地環境の積極的復元が求められている。草地の植生復元手法の一つに播種による方法が挙げられるが,国内で具体的手法の検討例は少ない。本研究では,復元目標種を,優占種とその他構成種に分け,異なる優占種の導入方法および異なる復元目標種の導入時期を設定して圃場試験を行った。試験初年の本年は導入種の出芽・初期定着を報告する。

復元目標種の導入時期として2013年3・5・7月を設定した。縦横1m,深さ30cmの塩化ビニル製枠の下部25cmを土中に埋設し,上端5cmを残して利根川築堤用の土壌を充填した。優占種としてチガヤを選び,導入方法として市販のチガヤマット,播種(1000粒/m2),苗(,非導入)を設定した。各条件3反復とした。チガヤを除く導入種は,ノアザミ,ツリガネニンジン,ワレモコウ,ツルボ,オトギリソウ,ユウガギク,アキノタムラソウ,メドハギとし,全試験区に各種50粒ずつ播種した。

ツルボの出芽率は3播種時期いずれも高く,出芽時期は4~8月まで及んだ。ユウガギク,ワレモコウ,メドハギは,5月施工区より7月施工区の出芽率が低かった。前2者は4~6月に多数の個体が出芽したが,メドハギについては4月の出芽が確認されなかった。ノアザミは4,5,10月に多数の個体が出芽したが,夏季の出芽はほぼ停止した。3月・5月施工区では導入種以外の雑草発生量が多く,マット区を除く試験区で植被率がほぼ100%となったが,7月施行区の雑草発生量はごく少なかった。メドハギとチガヤを除く導入種の夏季の草高は,雑草種が形成する群落高よりも低かった。チガヤについては,苗区とマット区における5月施行区の地上乾物重が最大となり,7月施工区でも生育は良好だったが,播種区では7月施工区のみにチガヤが残存した。


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