| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-029 (Poster presentation)

カエデ属を利用する葉食性昆虫の群集構造解析

*中臺亮介, 村上正志 (千葉大・理)

群集集合に影響を与える主要な要因として、歴史的進化的なプロセス、ニッチに基づく決定論的なプロセス、分散制限に基づく確率論的なプロセスが挙げられる。植物−植食性昆虫の関係においては、それぞれのプロセスは寄主植物の系統関係、形質、分布にそれぞれ対応すると考えることができる。

寄主植物間の植食性昆虫群集のパターンは多くの研究において研究がなされているが、それらのプロセスの影響について、同属の寄主植物という進化的に浅いスケールに注目した研究はほとんどない。

本研究ではカエデ属の寄主植物間における系統、葉の質、標高分布の影響を調査することにより、近縁な寄主植物間における植食者の群集集合のプロセスを明らかにすることを目的とする。

日本の変種を含む30種のカエデを対象として系統樹を作成し、6つの葉の形質について計測を行い、進化的な形質の保守性を意味する系統シグナルについて検証を行った。その結果、3つの形質で系統シグナルが確認された。野外調査では東京大学秩父演習林において、14種のカエデ属を対象として、植食性昆虫の採集を行い、植食者群集と寄主植物の関係について検証した。その結果、植食者が群集は寄主植物の系統、系統シグナルのある葉の形質、標高分布と相関を示した。

本研究の結果は歴史的なプロセスと現在の生態学的なプロセスの両方が植食者群集の構造を決定することを示唆する。


日本生態学会