| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-031 (Poster presentation)

成層期および混合期における有明海奥部海域の底生生物群集の分布の比較

*折田 亮(熊本県立大院・環境共生), 梅原 亮(熊本県立大院・環境共生), 小森田 智大(熊本県立大・環境共生), 堤 裕昭(熊本県立大・環境共生)

近年、有明海奥部海域では季節的な密度躍層の発達に伴い貧酸素水が発生し、底生生物群集への影響が懸念されている。底生生物群集の空間的な分布は、環境要因との関係から多く議論され、季節的に生じる撹乱は底生生物群集の空間的な分布やそれらを決定づける環境要因へ影響することが考えられる。本研究では、成層期(2012年9月11-12日)と混合期(2013年4月4日)に、有明海奥部海域(21定点)において、環境要因(水質項目: 水温・塩分・密度(σt)・溶存酸素濃度(DO)、底質項目: 泥分・酸揮発性硫化物量・Chl-a含量・Pheophytin含量・全有機炭素量・全窒素量・炭素、窒素安定同位体比)ならびに生物群集指標(密度・湿重量・種数・多様度指数(H')・均等度指数(J’))を調査し、両期の比較を通して、有明海奥部海域の底生生物群集の空間的な分布に対して、撹乱の有無がどのように影響しているのかについて考察する。

両期の底生生物群集は、クラスター解析の結果より成層期(4グループ)、混合期(2グループ)に分けられた。各グループの優占種と環境要因の空間的関係については、forward selectionにより変数を決定し、時期別にRDAを実施した。その結果、両期ともに第1軸には、優占種のFeeding guildsと関連の強い要因が選ばれ、これらが撹乱の有無に関わらず優占種の分布を決定づける要因であることが示唆された。一方、第2軸は、両期で異なり、混合期は地域的な違い(湾奥部・湾央部・諫早湾)を反映していたのに対し、成層期には、撹乱強度を示す指標が選ばれ、生息地環境のばらつきが大きくなる傾向が示された。撹乱に伴う生息地環境の多様化が、群集グループの増加に影響することが考えられた。


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