| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-042 (Poster presentation)

キノコ食昆虫のメタ群集構造:環境要因と空間要因

*小林卓也, 曽田貞滋 (京都大学動物生態学研究室)

生物群集の生成には、競争や生存率に影響する環境条件とハビタットの空間的な配置が、ともに重要な役割を果たしていると考えられる。群集を形成するメカニズムの直接的な観察は困難であるが、「どのような条件下で環境要因・空間要因の効果が変化するか」を調べることは、そのプロセスを推察する有効なアプローチのひとつだろう。

菌類が形成する子実体(キノコ)には、そこを生息場所、餌資源とする生物によってひとつの群集が成立する。また同じ地域内に同様のハビタットが多数パッチ状に分布するので空間配置を調べるのに適している。そこで本研究では多孔菌類のクジラタケ Trametes orientaris の子実体内部で生活する昆虫群集を用いて、局所群集間の比較により群集構造のパターンにおける環境要因の効果、空間パターン、さらにそれらの相対的重要性が変化する条件について調べた。

京都市の瓜生山に設定した1000m×1000mの調査区(標高100-300m)において、2013年6月5- 9日の期間に調査を行い、クジラタケの子実体とその内部の昆虫を採集し、採集地点の環境条件と空間的な位置を記録した。また各子実体の重量(ハビタットサイズ)と菌食昆虫の出現数の計測も行った。

解析の結果、キノコ食昆虫群集はある程度環境条件・空間配置により説明できるが、それらの効果はハビタットサイズの縮小ともに弱まった。また同じ枯死木上の子実体に形成される群集間での比較でもハビタットサイズが小さいほど群集の種組成の変異(β多様度)は大きくなった。

これかの結果から、キノコ食昆虫群集においてはハビタットサイズが大きい時には環境条件や空間配置などに基づく決定論的なプロセスの重要性が大きく、一方でハビタットサイズが小さい時には移入頻度の低下や優劣のない競争など、偶然性をもたらす何らかのプロセスが関わっていることが示唆された。


日本生態学会