| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-143 (Poster presentation)

房総半島のヒメボタル(Luciola parvula):生息条件と分布推定

*梯 公平 (東大・農・生圏システム), 倉西良一 (千葉中央博), 鎌田直人 (東大・農・生圏システム)

ヒメボタル (Luciola parvula) は、生活史の全ステージを陸上で過ごす陸生ホタルである。本種は発光コミュニケーション型のホタルであり、雄成虫は夜間に飛翔発光して雌を探す。一方、雌成虫は後翅が退化しており飛べない。このため雌の移動性は低く、個体群の地域固有性は高いと考えられる。近年、本種の生息地では、個体群の消失や個体数減少が報告されており、地域固有性の高い個体群の絶滅が危惧される。現時点で把握される個体群衰退の最大の原因は、人為的な開発による生息地の消失であり、生息地を可視化して示すことが衰退の抑止に効果的であると期待される。

しかしながら、本種の生息地の把握は容易ではない。例えば、成虫の発光時間帯には、宵型・深夜型・中間型の存在が報告されているが、特に深夜型の場合、成虫発生時期であっても人目に触れにくい。そのため、認知されないまま生息地が消失する危険性がある。本研究では、未確認の生息地を早期に発見するための分布モデルの推定、また、生息地を保全するために必要な情報として、分布規定要因の推定を行った。さらに、分布の基礎データとなる在/不在データの信頼性を示す成虫の発見率を推定した。

調査は千葉県で行い、東京大学千葉演習林、内浦山県民の森の林道(総延長約24km)で成虫のルートセンサス調査を実施し、在/不在データを取得した。これらをGIS上で各種環境条件と対応させて解析し、複数のモデルを用いて、分布規定要因、分布モデルの推定を行い、比較した。発見率は、発生のピーク時期はほぼ1となるものの、ピークをずれると低下した。成虫は、一部地域で初見日などのズレが経験的に把握されており、ズレのモデル化による発生ピーク時期の予測も今後の課題となる。


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