| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-156 (Poster presentation)

河川工作物は温暖化に伴う水温上昇を加速させるのか? -知床におけるオショロコマ密度と物理環境要因の関係-

*竹川有哉(徳島大院・先端技術),河口洋一(徳島大院・ソシオテクノ),谷口義則(名城大・理工),岸大弼(岐阜県河川環境研究所),卜部浩一,下田和孝(北海道・内水面水産試験場)

日本の年平均気温は100年間で約1.15℃上昇しており、気温上昇に伴う水温上昇が冷水性魚類に及ぼす影響が懸念される。知床半島は、冷水性魚類・オショロコマの世界における分布南限にあたること、砂防・治山ダムが300基以上設置されていることから、温暖化や人為的改変がオショロコマの生息環境に及ぼす影響を調べるのに適している。知床半島における既往研究では、堰堤の非設置区間よりも堰堤の設置区間で、オショロコマの生息密度が低い、水温が高い、瀬淵構造の変化(瀬や平瀬区間の増加)が報告されている。しかし、オショロコマの生息密度が低いことは、高水温と生息場劣化の双方が原因と考えられるが、どちらがどの程度影響しているのかは示されていない。本研究では、オショロコマの保全を効果的に行う上で、それらの原因がどの程度影響を及ぼすのか明らかにすることと、温暖化による影響を検出することを目的とし、半島内の12河川36地点において、魚類調査、物理環境調査を行ってきた。加えて、半島内の36河川に水温計を設置し、水温を決定する要因の抽出を試みた。その結果、夏季の最高水温が20℃付近に達する河川ではオショロコマの生息密度が極端に低く、最高水温が下がるほどに生息密度が増加する傾向がみられた。また、生息場となる河川構造の質に比べ、水温がオショロコマの生息密度を決定する要因として最も強く影響することが明らかになった。水温を決定する要因は、気温による影響とほぼ等しく、上流のダム設置数が多いほど水温が上昇する傾向が確認された。


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