| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-145 (Poster presentation)

カワウの営巣が森林動態に与える影響

*杢屋貴士(東北大・生命),中静透(東北大・生命),亀田佳代子(滋賀県立琵琶湖博物館)

カワウは内水面の林地などにコロニーを形成する大型の魚食性の水鳥である。国内では1980年代に入ると個体数の増加傾向が見られるようになり、以後コロニーの分布の拡大が報告されている。その結果、カワウの個体数の増加に伴い近年ではコロニーが形成された林地における森林衰退が問題となっている。カワウによる森林衰退は段階的に生じるものであり、まず、樹木にカワウの巣がかけられることでカワウの羽ばたきや踏みつけ、巣材採集による枝の折り取り等によって樹木は衰退・枯死してしまう。次に、その結果として林内が明るくなり、成長速度が早い草本植物が繁茂することで樹木の実生や稚樹の成長が阻害されて草原化が進行し、森林が衰退する。また、樹木の衰退の影響は樹種間で異なっていると報告されている。

一方でカワウは樹木を衰弱させることで林内にギャップを形成し、更新を促進させているとも考えられている。そこで本研究ではカワウの営巣数と林冠組成の違いによって森林の更新にどのような影響が生じているのか調査を行なった。

本研究では滋賀県の伊崎国有林を調査地とした。調査ではプロットごとの営巣数データと全天空写真から求めた光の透過率(SOC)を用いて、営巣数と林内の光環境の関係を明らかにした。また、毎木調査と林床植物(ヨウシュヤマゴボウとシダ類)の被覆度調査を行い、営巣数と林冠組成で林内の明るさ、林床植物、稚樹の個体数の関係について解析を行なった。

林内の明るさ(SOC)を応答変数、営巣数と広葉樹の胸高断面積合計を説明変数として、解析を行なったところ、営巣数が増えるにつれて林内は明るくなるが、林内の広葉樹が増えるにつれて林内は暗くなる傾向があることが分かった。当日の発表では、これに加えて営巣数と林冠組成の違いによる林床植物の被覆度、稚樹の個体数の関係についても議論する。


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