| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-151 (Poster presentation)

タンポポの花茎とロゼット葉の倒伏は何のためか~大型草食獣の摂食からの逃避~

*藤田昇(森林再生支援セ),幸田良介(大阪府立環境総合研)

日本原産のタンポポは開花後花茎を倒伏させ、種子散布時に再び直立させることが知られているが、その理由は分かっていない。モンゴルの放牧地のタンポポは日本原産のタンポポ同様に開花後に倒伏するが、都市域のタンポポは倒伏が顕著でない。そこで、タンポポの花茎の倒伏は家畜(大型草食獣)の食害を避けるためではないかと仮説を設定し、放牧地のタンポポの人為的な花茎の持ち上げ実験と野外での食害、モンゴルの放牧地と都市のタンポポと日本原産と移入種のタンポポの発達段階に対応した花茎とロゼット葉の高さ調査を行った。その結果、モンゴルの放牧地のタンポポは、倒伏している開花前の緑の頭花、開花後の褐色の頭花とロゼット葉は人為的に持ち上げると食害されるが、自然状態で倒伏すると食害を受けないことが分かった。モンゴルの放牧地と日本原産のタンポポは開花前と開花後の花茎を倒伏させるが、モンゴルの都市と日本の移入種の都市のタンポポには顕著な倒伏は見られなかった。モンゴルの放牧地のタンポポの花茎の倒伏は開花前後の頭花の食害を避けるために有効であり、都市域では食圧がなく、倒伏の必要がない。したがって、私たちの仮説は裏付けられると考えられる。発表では現在食害が存在しない日本原産のタンポポの花茎が倒伏する理由についても考察する。


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