| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-161 (Poster presentation)

九州のスギ品種に関するシカの嗜好性と精油量との関係

*香山雅純(国際農研), 野宮治人(森林総研九州), 矢部恒晶(森林総研九州),大平辰朗(森林総研)

九州における多くのスギ人工林では、シカの食害が発生している。また、九州では挿し木のスギ苗の植栽が中心であり、多くの品種が開発されている。スギ苗については、挿し木より実生の方がシカの食害を受けやすいとの報告がある。また、精油量の少ないスギ品種は、ノウサギの被害に特に遭いやすいとの報告がある。葉の精油量は九州のスギ品種間でばらつきがあることから、品種間でシカの食害が異なる可能性が示唆される。本研究は、複数のスギ品種を植栽し、シカの食害状況が異なるか、シカの食害に対して精油量が関与しているかを検討した。

2010年6月に、シカの多く生息する試験地2ヶ所 (球磨村、椎葉村) に九州における代表的な挿し木スギ7品種 (シャカイン、アヤスギ、メアサ、タノアカ、アラカワ、ヤマグチ、イワオ) と実生のスギ苗を、シカ柵で囲った試験地と囲わない試験地にランダムに植栽した。植栽後は、定期的に食害状況を検討した。そして、植栽したスギ苗は、2012年2月にすべての苗木のサンプリングを行い、成長と地上部の乾重量を測定した。

椎葉村に植栽したスギ苗は冬から春にかけて集中的に食害を受けており、どの品種も一様に激しい食害に遭っていた。一方、球磨村に植栽したスギは一年を通じて食害を受けていたが、被害の程度は椎葉村より軽かった。また、品種間で食害の傾向が異なり、シャカインやアヤスギの樹高はあまり低下しなかったのに対し、実生のスギやイワオは大きく低下した。

食害の傾向が異なった球磨村の試験地において、精油量が品種間で異なるかを検証するために2013年2月にスギ7品種と実生のスギ苗を再び植栽した。スギ苗は2015年1月にサンプリングを行い、精油の抽出を行った。植栽前の精油量はシャカインが24.2g kg-1で最も高く、実生のスギが7.2g kg-1で最も低かった。


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