| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-180 (Poster presentation)

小笠原諸島における外来性グリーンアノールの急速な形態進化

*安西航(東大・理), 高橋洋生, 戸田光彦(自然研), 遠藤秀紀(東大・総合研究博)

外来生物は在来の生態系に悪影響をもたらす一方で、進化生物学における優れたモデルケースとして注目されつつある。日本の小笠原諸島では、昆虫食の外来性グリーンアノールの捕食によってその固有生態系が大きな被害を受けている。本種は侵入して約50年という短期間ながら、現在父島と母島のほぼ全土に定着している。このニ島では、生息環境である植生、餌である昆虫群集、競争種と考えられる在来トカゲの生息密度などに差があることから、グリーンアノールに島間で形態差が生じている可能性が指摘されてきた。

本研究では父島と母島からグリーンアノールの野生個体を採集し、その形態を詳細に比較した。その結果、オスでは体サイズと頭部形態で有意な島間形態差が生じていた一方、メスでは有意差がみられないことがわかった。雌雄で傾向が異なることから、餌生物や植生といった雌雄両方に影響のある要因ではなく、オス間の競争が影響しているのではないかと考えられた。さらに、行動圏および生息環境に関係すると考えられる四肢の筋骨格形態および指下板の枚数を比較した。その結果、父島のオスは母島のオスよりも発達した上腕の内転筋をもつこと、父島のメスは母島のメスに比べ大腿部の伸筋と屈筋の一部が発達していること、母島のメスは父島のメスより後肢の指下板の枚数が多いことがわかった。これらの形質における差は、止まり木の高さや枝径などの環境要因が集団間及び雌雄間で異なっている可能性を示唆している。以上から、小笠原の二島間では既に形態差が生じていること、さらにその傾向は雌雄で異なっていることが明らかとなった。しかしながら、それらの生態学的な要因を検討するにはさらなる調査が必要と考える。


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