| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-185 (Poster presentation)

網羅的サンプリングとRAD-seq法を活用した分子系統地理-東アジアに広域分布するコンロンソウを例に

岩崎貴也*(京大・生態研),荒木希和子(立命館大・生命科学),永野惇(京大・生態研,JSTさきがけ),Sabirov, R.N.(Russian Academy of Science),Marhold, K.(Slovak Academy of Science, Charles Univ.),Yakubov, V.V.(Far East Branch of the Russia Academy of Sciences),Pak, J.-H.(Kyung-Pook National Univ.),伊藤元己(東大・総合文化),工藤洋(京大・生態研)

氷河期などの過去の環境変動に応じて、生物は自らの分布を変化させてきた。その変化過程を生物種内に残る遺伝構造から明らかにする分子系統地理研究は、これまでオルガネラDNAマーカーや数個~数十個の核DNAマーカーを用いて行われることが多かった。しかし、限られた数の遺伝マーカーでは、十分な遺伝的変異の情報が得られず、氷期中にわずかに残った逃避地の推定など複雑な歴史の推定が難しいことも多かった。東アジアの温帯に広く分布するアブラナ科の多年草コンロンソウ Cardamine leucantha でも、核遺伝子9座を用いた我々の先行研究から、石狩平野や韓国を境にして日本系統と大陸系統の2つが存在することまでは明らかになったが、変異の少なさからそれ以上の詳しい情報は得られていない。

我々はこの植物種の分布域をできるだけ網羅するように採集したサンプル(極東ロシアや韓国を含む314地点1152個体)と、次世代シーケンサーを活用したRAD-Seq法で得られる数千のゲノムワイドな一塩基多型情報を用い、分子系統地理解析を行った。本発表では、STRUCTURE解析や遺伝的多様度・固有度の地理的パターンなどの解析結果を元に、この植物の分布変遷史について考察を行う。


日本生態学会