| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


シンポジウム S09-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

アマモ場における移入種増加が生態系機能にもたらす変化について

堀正和(水研センター)

ある特定の種が優占して他の生物に生息環境を提供し、さらには周囲の物理環境をも変化させるほどの影響を及ぼす場合、その種は基盤種と呼ばれる。沿岸海洋域の生態系はこの基盤種をベースにした生物群集が卓越することが特徴であり、藻場やサンゴ礁、あるいはカキなどの二枚貝礁があげられる。近年では環境変動や大規模撹乱、あるいは人為的な生物侵入によって基盤種の衰退・置換が顕在化し、生態系機能・サービスへの影響が懸念されるようになった。なかでも生物侵入に関しては、在来の基盤種を駆逐するといった負の影響ばかりではなく、在来の絶滅危惧種が移入種を利用することで個体数を増加させた事実や、衰退した在来の基盤種の代わりに移入した基盤種が重要な産卵場や成育場になるといった正の効果も多く報告されたため、沿岸域の保全再生や管理において移入種を即座に全除去すべきかせざるべきかといった議論にまで発展している。移入種の負の部分のみに注目するのではなく、生態系機能・サービスを在来種と移入種で比較し、正と負の双方の影響について的確かつ冷静に評価することが求められている。

アマモ場は海洋の顕花植物を基盤種とする沿岸生態系であり、海洋で生物多様性と生態系機能が最も高い生態系の一つである。同時に、移入種が多い生態系としても知られており、その原因が日本産マガキ養殖にあると言われている。20世紀の初頭より世界各地でマガキ種苗が導入され、マガキに付随して多くの沿岸生物が日本から移入してきた。本発表では、最もマガキ養殖が盛んなカナダ・BC州からアメリカ・WA州、OR州、CA州までの北米西海岸を例に、マガキ養殖の導入に伴う現地のアマモ場生物群集の変化と、その群集構造の変化による生態系機能・サービスの変化の現状について紹介する。


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