| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-045 (Poster presentation)

遮光のパラドックス:なぜ弱光下で植物プランクトンは増えるのか

*時田紘太朗(東北大・理), 風間健宏(東北大・生命), 山道真人(京大・白眉/生態研), 片野泉(兵庫県立大・環境人間), 土井秀幸(兵庫県立大・シミュレーション), 吉田丈人(東大院・総合文化), Hairston, N. G.(Cornell Univ.), 占部城太郎(東北大・生命)

植物プランクトン(藻類)は、光の増加に伴って成長速度は高く、生物量は増加する。しかし、私達がコーネル大学の実験池で行った光操作実験では、遮光せず光投入量を多くした池ほど藻類の生物量は減少する、というパラドキシカルな現象が見られた。遮光していない池では、Charaを始めとする沈水植物が多く繁茂したことから、これらが藻類に対して拮抗的に作用した可能性がある。その機構として(1)両者間での栄養塩を巡る消費型競争や(2)沈水植物が出す阻害物質による藻類への干渉型競争が考えられた。そこで本研究では、それらの可能性を検証するため、濾過水希釈法による下記の現場培養実験を行った。すなわち、沈水植物の少ない75%遮光した池のGF/Fろ過池水(D池)と沈水植物の多い非遮光池のGF/Fろ過池水(C池)それぞれに、100 μm目合のネットで捕食者を除去した藻類を含むD池またはC池の池水を20%加え、培養液を作成し、170 ml容量のビン計24本に満たした。このうちの半分には、栄養塩(1.5 μM P、24 μM N、24 μM Si)を添加した。これら培養ビンを、48時間、C池の50 cm深で現場培養し、実験終了後、ビン内のChl a. 濃度の測定と藻類各種の細胞数を計数した。その結果、Chl a. 濃度の変化率は栄養塩添加に影響されたが、ろ過池水の間では有意な差はなかった。この結果から(1)消費型競争は棄却されなかったが(2)干渉型競争は棄却された。

本発表では、これら結果に、個々の藻類種の応答を含めて報告し、沈水植物と藻類の拮抗作用について議論する。


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