| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-048 (Poster presentation)

休耕田におけるミズニラの分布要因とその保全方法

*相澤 直.(明大 農),倉本 宣.(明大 農)

ミズニラ(Isoetes japonica)は、日本では本州・四国の低地に分布し、湿地、池沼周辺、水田に生育する水生のシダ植物である。環境省レッドデータブックでは準絶滅危惧種(NT)に、東京都内(南多摩地区)では絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に位置付けられ、生育条件の変化によっては絶滅の恐れがある種とされている。しかし、ミズニラについての研究は分類に関するものなど一部を除き、あまり行われておらず、保全に関する研究も少ない。そこで本研究では、このように絶滅が危惧されているにもかかわらず保全に関しての知見が乏しい、ミズニラに注目してその保全方法を検討すべく、本種がどのような条件下で分布・生育できるのかを明らかにすることを目的とし、調査を行った。

調査は、町田市北部の丘陵地帯に位置する図師小野路歴史環境保全地域(保全地域)内の休耕田4枚を対象とし、1m×1mの方形区を計23区画設置し行なった。調査期間は5月~12月で、各調査枠内において群落調査及び環境調査を行った。

調査の結果、ミズニラがほとんど確認されていない水田において、根茎を発達させる植物が他の水田に比べて多い傾向が見られた。また、各植生・環境要因とミズニラ植被率との相関関係を調べたところ、群落高や土壌硬度との間に負の相関関係が、多様度指数の間に正の相関関係が見られた。これらの結果から、高茎草本や根茎の発達する植物が偏って多く土壌硬度が高い場所ではミズニラの植被率は低く、分布が制限されることが示唆された。また、それらの植生・環境要因は水田ごとに異なっており、水田の立地特性や管理方法の違いが影響を与えている可能性が考えられる。

今後はこのような結果を考慮し、保全方法を検討していきたい。


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